寺田寅彦著「天災と国防」読了

寺田寅彦著「天災と国防」(講談社学術文庫)を読み終えました.

寺田寅彦の作品の中から災害に関するものだけを集めて纏めた文庫本です.中にはこれまで読んだ作品も含まれていましたが,こうやってまとめて読めたのは良かったと思っています.

寺田寅彦の文章の魅力は,圧倒的にクールな視点と,それとは対照的に人間味溢れる温かな視点とが共存しているところです.この本では,特に「クールな視点」を数多く確認することができます.印象的な文章を引用しておきます.

  • ものをこわがらな過ぎたり,こわがり過ぎたりするのはやさしいが,正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた(「小爆発二件」より)
  • 人間というものが,そういうふうに驚くべき忘れっぽい健忘性な存在として創造されたという,悲しいがいかんともすることのできない自然科学的事実に基づくものであろう.(「函館の大火について」より)
  • 根拠の無い事を肯定するのが迷信ならば,否定すべき反証の明らかでない命題を否定するのは,少なくとも軽卒とは云われよう.(「厄年とetc.」より)
  • 過去を定めるものは現在であって,現在を定めるのが未来ではあるまいか.(同上より)